03.「じぶんに甘い言葉」は耳障りがいい


私たち人間には、「自己保存」という自分を守ろうとする本能に基づく心理があります。生存競争に勝たねばなりませんから、自己保存は遺伝子に組み込まれた使命のようなものです。


時代は競争社会。小さいころからお受験戦争、就職活動のサバイバル。苦労の末にたどり着いた念願の就職先でも仕事で結果を求められる毎日。常にライバルを蹴落とし、自分アピール。気の合う友人達も裏では単なる格付け相手。ふと立ち止まると心のどこかが満たされていない自分がいました。



四六時中他者と比べ続ける毎日。そんな日々から逃げ出したくなった時、何気なく入った不思議なカウンセリングルーム。「あなたは神に愛される特別な人、だからこそ妨害にあってしまう。常にプラス思考で理想の自分を思い描けば神に届き、実現する」


気持ちが弱っているときには効果てきめんです。巧妙なトークで相談者の抱える悩みに寄り添い、心をつかんでいく。「今の自分は本当の自分じゃない。癒されたい」と心が悲鳴を上げている人にとっては、心地よい言葉のシャワーはまるで一度はまると抜け出せないアリ地獄のようです。


  

ポジティブだけで解決できるほど甘くはない


途切れることなく順風満帆な人生を送れる人はいません。人生に起きる様々な出来事に人は一喜一憂し心が揺さぶられます。時に自分では抑えきれない激しい衝動が湧き上がってくることもあります。自らの今の感情が心のすべてと捉えてしまいますが、人間はもっと複雑な生命体。


表面の心の他には、死後使用する幽体の心、さらに高級な霊的カラダである霊体の心、これら全体が『魂(たましい)』を構成しています。(難しい話はこの章では省きます)


人は霊的な生命体として、死後も途方もなく長い間生きていきます。その長く続く人生を生き続ける魂は複雑で深く神秘的なものであり、巷でよく聞く表面の心の持ちようで対処できるような単純なものではないようです。



「ポジティブ思考で、なりたい自分を想像する。」この世が生きやすくなるのならば取り入れて生きていくのがいいと思います。辛い事ばかりで、楽しい事もないと毎日が苦しくなります。ですからストレス解消はとても大切な事。


ただ、それは表面の心の状態が一時的に前向きになるだけで、自分の中に眠る深い意識や心理でもある、魂全体の救いになることはありません。